ゼンマイと天符で、行って戻る。仕組みは1796年の本のとおり。
土佐の暦算家・細川半蔵(頼直、1741ごろ〜1796)が『機巧図彙(からくりずい)』を出した。首巻は和時計4種、上巻は茶運人形・五段返・連理返、下巻は龍門滝など6種。門外不出だったからくりの図面を公開した、日本で初めての機械の本とされる。上巻の一番目が、この茶運び人形。
木と糸と鯨のひげだけで作る。九代玉屋庄兵衛の復元では、顔は檜、胴は桜、歯車は花梨、軸は赤樫、速さを決める部品は柘植・黒檀・竹と、7種の木を使い分ける。鋼のばねを作る技術がなかったので、セミクジラの上あごのひげを厚さ一定に削り、渦巻きに巻いてゼンマイにした。
茶碗を盆に載せると客の前まで進み、客が取ると止まる。飲み終えて戻すと、その場でくるりと向きを変えて帰る。座敷での客あしらいの余興で、人と人の間に会話を生む「道具」だった。大きさは30cmほどが一般的。
最古の例は17世紀の時計師・竹田清房(竹田近江)にさかのぼる。田中久重(からくり儀右衛門、1799〜1881)は茶運び人形や弓曳き童子を作り、和時計の最高傑作「万年自鳴鐘」を製作。東京銀座に開いた工場が、のちの東芝の前身になった。
各地に残る江戸の茶運び人形は『機巧図彙』の機構と違う点があり、本のとおりに作られた江戸時代の個体は確認されていない。いま見られる人形の多くは、本をもとにした現代の復元(1982年 日本模型、2002年・2007年 学研など)。この3Dも「本のとおりに組んだ一体」。歯車の枚数はこの模型の設計値で、そこから歩く速さまでの数字をすべて連動させて計算している。
| ゼンマイ残り | – 巻 |
| ばねの力 | – % |
| 天符(てんぷ) | – 打/秒 |
| ガンギ車(12歯) | – rpm |
| 二番車(20歯/12歯) | – rpm |
| ゼンマイ胴(48歯) | – rpm |
| 車輪(6歯・径5 cm) | – rpm |
| 歩く速さ | – cm/s |
| 回転板 | – |
| 運んだ茶 | 0 杯 |
| 歩いた距離 | 0 cm |
| ゼンマイを巻いた | 0 回 |
茶碗を盆に置くと歩き出し、客が取ると止まり、戻すと向きを変えて帰ってくる。
電気はありません。クジラのひげのゼンマイと、天符という振り子だけ。江戸の『機巧図彙』(1796)に描かれた仕組みを3Dで組み、歯車から歩く速さまで全部の数字を連動させました。歯車の枚数はこの模型の設計値です。